純粋に身体同調に意識を向けるために洋画を中心に取り上げています。言葉の意味がわからなくても気にせず、身体の動きと周りの環境とだけをよく観察して模倣してみてください。ちなみに次号では、相手に共感するため身体同調以外のテクニックについても書いていくつもりです。たとえば経験や事前知識を利用して想像して推測によって共感するということをぼくたちは無意識にガンガンやっています。看護師にはビッチが多いからやりたいはずだとか。美大生は性にだらしがないからやりたいはずだとか。ナンパでは初対面の女を相手にするため、相手の身体情報しか手がかりがないことも多いです。<日本人>の<女>であることくらいしか背景の情報がなかったりする。そうすると彼女に共感するためには相手の身体情報がとても大きな手がかりになります。
A) 緊張とリラックス
心をアメーバーのようなイメージで捉えろと言われて、さらに訳が分からなくなってしまった人たちへ。失礼しました。まずは相手の緊張状態をイメージで捉えるということをやってみてください。これはぼくが人と接するときに最低限心掛けていることです。
例1
若い女のほうに身体同調してみてください。
最初は彼女の心はグッと緊張した状態であることがなんとなくわかるでしょうか。それから1:20、彼女が背中を向けて相手を視界から消した時に緊張状態がふっと抜けます。この状態の変化にうまく同調してみてください。リラックスした状態1:20以前にはなかった感情が混ざっています。緊張状態を感情の発散とともに解放したような感じ。人と物理的に向かい合うと必ず緊張状態は避けられないのだということをこの動画は教えてくれます。
例2
右側の男に身体同調することで共感してみてください。彼はなんとなくリラックスしているように感じます。
彼女が男のほうに体を向けた後に、彼のほうも少し距離をとるようにして彼女のほうに身体を向けます。この感じをうまく捉えてみてください。ぼくから見ると、彼はなるべくリラックスした状態を保てるように無意識に身体を動かして距離を調整しているように感じられます。
例3
途中から出てくるニットキャップを被った白人に身体同調してみてください。1:10からの数秒間に地蔵問題のあらゆるすべてが表れています。彼が場に入っていくタイミング、身体の姿勢や、目つき、声のボリュームやトーンなどに注意をしながら観てみてください。グッと緊張した状態から、自分で事前にスッとリラックスした状態を作り出したうえで、フワッと場に入っていく。この感じ。ぼくはこの動画を見るたびに、やっぱり1:10のところで鳥肌が立って感動します。ずっとナンパをやってきた人ならぼくと同じ鳥肌を味わうでしょう?ぼくたちナンパ師のストリートと彼の戦場とは全く違う環境だけど、身体の状態は同じなのですね。環境に依存しないというのが共感のもつ深いポテンシャルです。
例4
今度は女に同調してみてください。
雨の中の彼女の表情や姿勢・せわしない動きなどから、心をギュッとつかむような緊張状態が続感じられるでしょうか?それがある種の諦念のような形で徐々に手放されていくプロセスで男と出会います。この緊張感を手放すことが余儀なくされる感じをつかんでみてください。そしてそのようなある種リラックスしつつある状態で猫が見つかる。
B) 意識の先と感情の質
同じ4つの動画を緊張状態とはまた違った視点から見てみることにします。彼らは意識をどこに向けているでしょうか。そしてどのような類の感情を発しているでしょうか。この2つを探るように身体同調してみてください。
例1
彼女はもちろん、目の前のオバサンに対してかなり集中して意識を向けています。しかし感情はうまく読み取れません。しかし1:20で背を向けて、身体が少しリラックスした状態になったときに、彼女の感情がむくむくと湧いてくるのを感じ取ることができるはずです。
リラックスした時に初めて今まで気づかなかった感情を取り出すことができる。これは日々声掛けをしている皆さんなら誰でも知っていることでしょう。
例2
おじさんの声は彼女に対して発せられている感じはあまりなく、彼の意識は外側の何かに向いているというよりかは、内側つまり自分の記憶を探っているような感じがします。そういうわけで、彼の発する感情は彼女にはピンポイントでは向いておりません。波紋が広がるようにぼんわりと四方に広がっているような印象を受けます。女に対する感情はかなり曖昧でいまいちよくわかりません、彼自身にもわかっていないような気がします。
このように同じように声を発していても、それが相手に届いているかどうかというのはとても大事なチェックポイントです。声の先がぼやけていない人は、相手の存在を明確に意識しており、ぼやけている人は別の何かを意識しているということができるでしょう。
例3
それとは対照的に、例3の男性は一度場にフワッと入ってからはしっかりと対象を意識して発せられている感じがします。相手に感情をぶつけようとしている。それではそれはどんな感情でしょうか?それにうまくフォーカスを当てるために、エミネムの表情や声のトーン、身振り(特に指先や首の動き)に身体同調してみてください。
ちなみにこの映画は『8マイル』です。RAPというのは抑圧されていた激しい感情を表現するのにとても適した形式であるように思います。先天的にブラックカルチャーを解しない日本のラッパーたちが黒人たちの身振り手振りを真似して日本でラップをやるのは、身体同調の観点で言えばわりと正しいアプローチの仕方だと言えるかもしれません。
例4
猫が見つかった瞬間に、彼女の意識はもちろん猫へと集中します。再び時間が動きだして、猫に対する感情がフワッと解放されて、そのまま激しくなっていくのが感じられるでしょうか?そしてここからが圧巻。彼女の意識が1:15に新しいものを捉えます。この時の彼女の表情に丁寧に同調してみてほしい。この表情はもちろん男に対する感情です。彼女は猫と男の双方に意識を注ぎながら、彼との距離を縮めていきます。意識の流れに細かく同調するというのは、こういう感じです。
例3は一般的には「怒り」と呼ばれている感情で、例4は「愛情」と呼ばれているような感情です。世間的には逆のものだと思われがちですが、共感してみると激しさという点ではかなり似通った質の感情であることがわかるはず。こういう風に名前にとらわれずに感情の質を自分なりにつかむ訓練をやってみてほしいと思います。
さらにもう少し丁寧に同調してみると、例3と例4はもちろん異なる部分もあります。例3のエミネムの場合、激しい感情はギュっとした心の状態の反動のような形でパンッ、パンッと相手にストレートに向かっている。例4のオードリーの場合、リラックスした心の状態から、奥のほうからじんわり感情がわいてきてそれが徐々に激しくなっていくような感じ。キスをしているときは高まりすぎてもはやちょっとした陶酔、混乱状態になっています。この陶酔状態については後で詳しく書きます。
例5
この動画にいたってはもうなんと説明すればうまく伝えれるのか皆目見当もつきませんが、とにかくまずは観てみてください。そして身体同調しながら、この2人の意識の流れを時間の経過と共に追ってみてください。対面の相手に意識が向いているとき、そこにはどのような質の感情が流れ込んでいるのかも感じてみてください。そして、もし何かしらの拍子に2人の視線が交差してしまって離れなくなってしまったとしたら。これは想像でしかありませんが、その時はどういった感情に陥ってしまうかということも想像してみてください。おそらく2人はそのことを想像し予感しているのだと思います。
C) 葛藤:心の多層性を知る
最初に緊張とリラックスの状態について書きましたが、緊張状態にある場合の多くは人間には相反するような2つの心の動き(たとえば「やりたい」と「やりたくない」など)が同居したような状態であることが多いです。この心の状態をここではあえて「葛藤」とよびます。相手の葛藤状態を自分の中に作り出すことができると、相手のことがわかるという実感をより堅固に持つことができるようになります。ナンパにおいても必須のスキルですね。
例6
せっかくなのでナンパの映画を取り上げてみました。パーティーで主人公の男が女をナンパするシーン。ここではナンパされる女のほうに共感してみてください。
彼女の表情や振る舞いから、主人公の男に対する相反した2つの感情がわかりますね。たとえば0:20に男から握手を求められたときの表情と振る舞いに注目してみてください。振る舞いは男を避けていますが、表情は間違いなく男を求めています。そして彼女の場合、STOPのほうがGOに比べて弱すぎることもわかると思います。女は建前として申し訳程度に形式グダを用意してるんだけど、もうアクセル踏む気満々です。1:42キスのモーションがかかった瞬間にブレーキがぶっ壊れてます。葛藤のバランスが崩れる瞬間に常に注意を払ってください。以上クラブあるあるでした。こうやって女の気持ちが手に取るようにわかるようになるとナンパははかどりますよぉ。
ちなみにこれは『愛とセックスとセレブリティ』という映画で、超絶イケメンがPUAテクニックを駆使して豪遊ヒモ生活を送るという愉快な内容です。だいぶ昔にHULUで観た記憶あるので興味ある方はぜひ。
例7
長髪の男性に共感してみてください。
彼の意識の対象は目の前の病人にストレートに向いていますね。他人に対して向ける感情にも相反するものが織り交ざっていることが多いです。言葉にすると多くの場合それは「愛」と「憎しみ」ということになるのでしょうが、ここではその感情を名前にせず、身体同調の面から自分なりにとらえてみてください。細長い板の上に立っている人のことをイメージしてみてください。例6の女がバランスをとれずにすぐに落ちてしまう感じだとすれば、例7の彼はヨロヨロとしながらも長時間バランスを保ちながら、ついには落ちてしまうような感じです。バランスを保とうとしているときの身体のゆらぎをしっかり観察して同調してみてください。
葛藤のバランスが崩れた折の深い感情表現というのは大体において一瞬の表出で終わってしまうので、その瞬間を逃さないよう心がけてみてください。そして一度バランスが崩れて解放されてしまうと、今度は大袈裟な表現になって自己陶酔が始まることが多いです。この動画では3:05あたりから陶酔が始まっているように感じます。
ちなみに傍に立ってやりとりを聴いている男性はトム・クルーズに共感していますね。
例8
次は電車でのナンパシーンです。男性に共感してみてください。例3のエミネムは動き出しの瞬間がエレガントすぎて地蔵の葛藤の状態を察知することも困難でしたが、例7の彼は動きの中に葛藤がとてもわかりやすく表れています。彼はいったいどこで躊躇して、どこで踏み込んだでしょうか。
もちろん場が動きだすのは1:54、彼女が席を立った時です。ここで彼の地蔵が解消される。環境が変化することによって膠着した葛藤の状態がフワッと解放されて、自然と一歩目を踏み出せることがあります。一度距離を縮めてからは、また膠着した葛藤状態に落ち着きます。2:13の彼の一瞬の躊躇いがわかるでしょうか?環境の変化に瞬時に対応できないと、出会いを逃します。ナンパ師的にはこの一瞬の躊躇いが命取りです。
セックス中毒の男を描いた『SHAME』という映画でした。
D) 感覚の広がり、感情の深さ
相手の感覚がどれだけ制限されているか、相手の表現がどの程度の深さの感情から来たものなのかを感じとるのにはコツがいります。誰かに対して持つ印象というのは、実はこれらを判断するのにとても大きな手がかりを与えてくれます。特に初対面の相手の場合は何かしらの違和感がきっかけになって察することが多いです。しかし違和感と言われてもピンと来ないかもしれません。判断のポイントはいくつもありますが、ぼくが大事だと思う身体動作を一つずつ見ていきます。
1、速い動きと緩やかな動き
動きの速さというのは相手の表現がどの程度の深さの感情から来ているのかを察知する際にとても大事なヒントを与えてくれます。それを体感するためにいくつかキスシーンをとりあげてみました。
例8
エレベーター内で男が女に突然キスを仕掛けます。女に同調してみてください。
彼のキスのモーションはとても速いです。例4でもキスする瞬間にグワッとオードリーの感情が小さく爆発して相手にストレートに向かっていました。このように身体動作のスピードが上がっているときは、身体のコントロールを失いやすく、身体の感覚も麻痺しやすいです。相手に対して強く沸き立つような感情に掻き立てられて一種の陶酔状態にあるということです。
さらにここでは彼の突然の行動によって、彼女の心の中にはある種の混乱状態が生じています。この時自分の身体のコントロールをふわっと手放して相手にゆだねる感じが共感できるでしょうか。これもまたかなり心地の良い一種の陶酔状態を引き起こします。その結果、そのほかの感覚は閉ざされています。
例9
ここではもう少し穏やかにキスが始まっています。実際の男女のシチュエーションだと、男が永作友美さんのように能動的、女がマツケンのように受動的な立場にあることが多いです。
まずは永作さんに身体同調してみてください。
前述の例8ほど激しい動きではないので、自分の行動がしっかりと客観視できてコントロールできている感じがわかります。そのぶん彼女は自分の感情をよりしっかりと味わうことができているはずです。ただ彼女の目つきに注目してほしいのですが、ある種の自意識が巧妙に織り交ざっている。つまり男の目線を意識した目になっていて、それがちょっとしたフワフワとした陶酔感を引き起こしています。多く深い感覚や感情にアクセスすることを妨げられる。陶酔感で言うと、例4のオードリーはちょっと高ぶって酔いしれいてる感じ。反対に、例9の穏やかな動きのほうが自分の感情や感覚に深くアクセスして味わうことができる。これは本当に大事なポイント。自分で絶対確かめてみて。
次はマツケンにも共感してみてください。
例9とは違って不意をつかれたわけじゃないから、そこまで混乱した状態にはなっていません。なので自分の感覚を噛み締めているような感じはあります。ただ、彼の意識はとても内向きです。そのぶん身体感覚は閉ざされている。それで永作さんが働きかけて、マツケンが控えめに応じる。ナンパをしていたら、こういうシチュエーションには嫌というほど出会いますので、しっかりマツケンには共感しておきましょうね。
2、ゆらぎ
トムクルーズの例でも見ましたが、相手の身体に<ゆらぎ>があるかどうかというのはとても大切な観察ポイントです。
例10
この男の声のトーン、目線、身振りなどを自分で模倣して身体同調しながら視聴してみてほしいです。
彼からは最初比較的はじけるような激しい感情が彼女に対してストレートに発せられているのがわかるだろう。しかしその感情を受け取った彼女が同じようにストレートに彼に激しい感情をぶつけ返したことで、1:14彼に大きな混乱が生まれている。それをうまくカムフラージュしようとしているが結局完全には挽回できないまま、(かなり大きめの)感情のゆらぎが発せられている。心の中の動揺は身体にも必ず作用して<ゆらぎ>となって表れます。こういう相手の身体に生じている<ゆらぎ>をしっかり観察できたら人間関係はとてもはかどります。この動画はとても分かりやすい例です。
例11
少し画質が粗くて恐縮ですがナンパの動画を取り上げます。
路上で知らない女に話しかけるときに起こるであろう「ゆらぎ」が彼には全くありませんね。それどころかとても開放的でポジティヴな感情が全身から発せられています。実はこれは感覚が開いていない証拠です。通常感じられる他人に対する躊躇の動きが完全に欠落しています。
人が人と出会う瞬間の「ゆらぎ」におおいに着目してみてほしいです。それが見つからないときは何かしらの感覚や感情が欠落しているという推測はかなり的を得ているでしょう。アルコールやドラッグ、あるいは特殊な訓練などでいわゆるゆらぎはなくなってしまいます。
例12
次は映画ではないですが、このMVに登場する女に同調してみてください。
彼女にも基本まったく「ゆらぎ」がありません。ふつうは瞳にわずかばかりのゆらぎがあるものですが、彼女の表情は固定され瞳は微動だにしません。外からの刺激に対して鈍感で、無意識に多くの知覚をオフにして、精神的な暗闇の中にいるような印象を受けます。ふだんから「ゆらぎ」が強すぎる敏感な人は、それに対処するために無意識で感覚を遮断する処理をしていたりします。EMINEMのように外側に感情が激しく溢れ出させる術を持たず、内側で大きな感情がなみなみと湛えられているような印象を受けます。途中でギュッと凝縮された感情が耐えられずに噴き出している場面がありますね。
例13
今回の動画の中で一番非現実的なものを取り上げます。想像力も駆使しながら、モヒカン頭の男には何の感覚が欠落しているのかに想いを馳せながら、共感してみてください。また彼には何の感覚が過剰にあるのかも注意してみてください。感覚や感情が過剰にあることで人というのは陶酔・麻痺状態に陥ります。(あと彼は最終的にいろんなところを撃たれて死ぬので、見続けるのがキツかったら絶対に途中でやめてください)
3、大げさな身振り・ルーティン動作
例14
この登壇している男に共感してみてください。
彼の動きの特徴は「大げさ」です。何かしらの過剰さです。実際に身体同調をしてみると腑に落ちるはずですが、身振りや声のトーンなどが必要以上に大きいときは自分の感情に深くアクセスできないものです。そういう大袈裟な表現をすることで、深いところにある感情を攪乱して見えなくするわけです。おそらく多くのAV女優たちも自分でそのことをしっかりわかっているはずです。彼女たちの快楽の表現をフェイクだと言ってるわけではなく、わりと浅いところにあるわかりやすい感情をパッと取り出してデフォルメしたような感じです。ルーティンや大げさな身振りをしているときというのは、リアルタイムで流れている感情を感じ取ることが難しいというのが、体感でわかってもらえたらここではOKです。
ちなみに上の動画は『マグノリア』で、男の役柄はカリスマナンパ講師です。一度これくらい極端に振り切れたらナンパが楽しくなる気がする。
次は同じ映画から3つ引っ張ってきました。ディカプリオの身振りに同調してみてください。彼はどの程度自分のリアルタイムの感情を認識しているでしょうか?
例15
例16
例17
例15はかなり大げさな身体動作です。上述のマグノリアのトムクルーズと全く同じ身体状態ですね。つまり比較的浅い部分からの感情表現だということです。(嘘っぱちの演出だと言ってるわけではありません。)そしてこの浅い部分からの熱狂的な感情で知覚を酩酊させている感じです。
例16も表情や仕草がいちいち大げさです。大げさな表現の影には、身体の揺らぎがこっそり隠れているようなときもあります。それを捉えることができれば、彼が他人に隠したい感情に共感することができます。世の中にはすごい剣幕で逆ギレをする人が多いですが、あれも身体の「ゆらぎ」を覆い隠している例だと言えるでしょう。
例17にはそこまで大げさなものは感じられません。最初の数分に彼の身体が小刻みにゆらいでいるのが感じれるでしょうか?これはわりかし心の深い部分からの感情表現です。
ちなみに例17のマシュー・マコノヒーにもゆらぎが全く感じられません。何かしらの感覚が閉ざされているように思います。自分よりも感覚が閉ざされている人のことは共感しやすい傾向にあります。反対に自分よりもいろんな感覚が開かれている人のことは共感しづらく、適切な想像力が必要になります。
例18
最後に今までの集大成です。ここに登場するハットの鬼軍曹の表情や姿勢、目線の先、声のトーンなどを時間の経過と共にしっかりととらえて同調してみてください。そうすることで彼の心の状態を自分のなかに作り出すことができると思います。具体的には、、
1、彼の緊張状態をとらえてみる。
2、彼の意識の向かっている先と、感情の質をとらえてみる。
3、彼の葛藤をとらえてみる。
4、彼の感覚の閉じ具合をとらえてみる。
1:35あたりからふだんのルーティンの日常が崩れていくので、さらに集中してみてみてほしい。彼の姿勢や動き、歩くスピード、声のトーンなどがどう変化していくか。こうやって映画だけじゃなくて、毎日の中でいろんな人に共感しながら毎日を過ごしていると退屈しないですよ笑
総括
最初にも書いた通り、共感というのは相手の感覚や感情を自分の中に作り出してみる、自分の心を素材にして再現してみるという試みです。そのための方法論のひとつ『身体同調』について詳しく書きました。
より純粋な形で身体同調を遂行するために、言葉の意味でのやりとりをバッサリとカットしています。また「怒り」や「不安」というように名前の付いたもので感情を捉えることも放棄しました。しかし鋭い人は気づいていらっしゃったかもしれませんが、周りの環境などの情報は遮断できませんでした。映画でも現実でもこれを純粋に分断することはできません。そういう意味で、身体情報だけを捉えているわけではなく、「経験」や「知識」に基づいた想像力が入り込む余地をおおいに残しています。
自分はふだんほとんど映画を見ないので、映画シーンの素材を探すプロセスには本当に苦労しました。具体例がまだまだ少ないと感じております。もし何かしら良さげな映画の素材がありましたら、情報をくださるとありがたいです。それに応じて適宜アップデートしていきたいと考えています。
次号の内容予告
1、身体同調による共感だけでは少し覚束ない時に、想像力を使って相手を理解することで、共感を補完する試みについて詳しく見ていきます。
例19
たとえば上の動画の初老の男に共感してみてください。どこかしらにちょっとした違和感を感じるはずです。
種明かしをすると彼は盲目です。視覚が閉ざされています。丁寧に身体同調するだけで彼が盲目であることを特定できる人は素晴らしいです。ふだんから注意深く相手と接しているとそういう洞察力は徐々に身についてきますが、ただ普通の人であってもなにかしらの違和感は感じるはずです。そういう違和感を大事にしてもらいたいと思います。
人間には共感を想像力で補完する能力があらかじめ備わっていて、ぼくたちはふだんそのことを意識せずに複合的に使っております。つまりその共感が相手の身体情報から判断したものなのか、それとも事前知識から判断したものなのか、いまいち自分でも意識しないまま共感しているということです。ふだんの生活の中では「この人は目が見えない」という事前知識を考慮に入れたうえで相手に共感しようとするシチュエーションのほうが圧倒的に多いです。次号では、そういった事前情報などから想像力を駆使して共感していくメソッドについて書いていく予定です。
ただし口が酸っぱくなるほど強調しておきますが、事前情報などはあくまで補助的な判断材料にとどめておくのがいいです。というのも、身体情報と事前知識だったら前者のほうが圧倒的に多くの正しいことを伝えてくれるからです。
2、他人にできるだけ共感しようと近づくにつれて、初めて表れる自分というものがあります。嫉妬というのはその典型例ですね。友人の昇進やスト高ゲットの喜びを純粋に模倣して同調できない。どうしたって滲み出してくる自分の感情がある。だからこそ他人への共感は自分自身の探求にもつながり、自分自身の探求が他人の理解へとつながるわけです。そういうことを様々な例を挙げながら書いていきます。
ちなみにもうほとんど書き終えています。クオリティとしては少なくとも今号と同程度のものに仕上がっておるはずです。どうぞお楽しみに。
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